大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島家庭裁判所竹原支部 昭和34年(家イ)32号 審判 1959年11月05日

申立人 塩山キヨ子(仮名)

相手方 塩山実(仮名)

主文

申立人と相手方を離婚する。

理由

申立人は主文同旨の調停の申立をなし、その申立の原因として、申立人は相手方と大正一二年頃婚姻の予約をし、事実上の夫婦として同棲し大正一五年八月○○日婚姻の届出をし爾来三七年間共同生活をして来たのであるが、右両名はいずれも盲目で按摩を業として生計を立て今日に至つたが、相手方は昭和三二年一二月開眼手術のため日赤病院に入院し同三四年一月中頃退院したが、普通人のようには見えないが稍視力を回復し歩行には差支ないまでになつた。ところが物質欲に強い相手方は一層その度を増し、家財道具、衣類、寝具等めぼしい物を匿し、その上申立人に暴行を加えるようになり、到底共同生活に堪えられないので申立人は昭和三四年八月頃御庁に対し離婚調停の申立をしたが、相手方は協議離婚をする意思をほのめかしたので右調停の申立を取下げた。そこで申立人はその後再三離婚届に捺印するよう人を介して要求したが、相手方は言を左右にして捺印を拒んだので本調停の申立に及んだ、と陳述した。

相手方は申立人と離婚する意思がないので調停に応ずることはできないと陳述した。

当裁判所の調停委員会は種々離婚の勧告をしたけれども調停は成立するに至らなかつた、そこで当裁判所は右当事者間の昭和三四(家イ)第一八号離婚等調停申立事件に添付の戸籍謄本の記載と、当事者双方の陳述とを綜合すると、申立人の主張事実の真実性を認めることができるので、調停委員中島嘉太郎及同大沢靖夫の意見を聴き、家事審判法第二四条の審判によるを相当と認め主文のとおり審判する。

(家事審判官 坂本金次)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例